ハゲにだって恋する権利はある|育毛ハゲタカ記

育毛剤の効果

育毛の効果は私の中では徐々出始めていました。

 

もっとも周りはまだ気付かないレベルでしょうが……。

 

それは逆に都合が良いとも言えます。

 

突然フサフサになったりしたら、それこそカツラ疑惑が出てしまいますから。

 

じわじわと生え、最終的にハゲを克服した暁には、育毛剤を使用し頑張ったのだと嘘偽りなく周りに伝えたいのです。

 

そんな私ですが、本格的な育毛をスタートさせ、いつしか30代に突入していました。

 

春。新しい季節。

 

ハゲにだって恋する権利はある|育毛ハゲタカ記

 

わが社でも新入社員の配属や、部署の移動などで忙しい時期です。

 

そして、このタイミングで私はついに出会ってしまうのです。

 

「今日からこちらに配属されました、荻野里香です」

 

清楚なロングヘアに、制服からこぼれる美脚。

 

隣の事業所から移動してきたという荻野さんは、全体会議などで見かけたことはあったもののこれまで意識したことはありませんでした。

 

ですが、こうして目の前にいる彼女に、私ははっきり言って一目ぼれです。

 

(可愛い……)

 

私は出来る限りハゲの隠れる角度で会釈をすると、ドキドキと高鳴る胸を落ち着かせようと必死でした。

 

周りの独身の男たちを見ると、彼らもまんざらではないようでライバルは少なくないことが伺えます。

 

これまでの私だったらここで諦めていたでしょう。

 

けれど、うっすらと増えた毛が私を後押ししてくれているようでした。

 

 

荻野さんが来てからというもの、職場の雰囲気が明るくなりました。

 

素敵な笑顔、美味しそうな手作りのお弁当、優しい口調での電話応対。

 

その一つ一つに私は惹かれていきます。

 

部署内では彼女の歓迎会がありました。

 

ハゲにだって恋する権利はある|育毛ハゲタカ記

 

荻野さんは若く見えますが27歳との事。

 

「結婚しないんですか?」

 

と野暮なことを聞く若い連中に、

 

「相手がいませんので」

 

恥ずかしそうにそう答えた彼女。

 

これは、もしかしたら本当にチャンスではないでしょうか?

 

ハゲてさえいなければ……と自分を責めても仕方ありません。

 

ここは一つ、ハゲなりにアタック方法を考え出すことに決めたのです。

 

ハゲの恋愛相談

 

「髪ングアウト同好会」のメンバーには既婚者もいました。

 

ハゲる前に知り合った人、ハゲた後で知り合った人。

 

ちなみに、ハゲた後で知り合った人の方が幸せそうに見えるのは気のせいではないと思います。

 

次第に劣化していく夫と、最初からハゲているのを知っての結婚ではやはり違うのでしょう。

 

そう思うと、今このタイミングで恋をしたことは悪いことばかりではないのかもしれません。

 

話を戻して、私は仲間の連中に恋愛相談をします。

 

「ハゲタカ組長が恋、しかも美人に!?」

 

「全く理想が高いんだから」

 

「いやいや、ハゲだからって相応の人を好きにならなければいけない訳じゃないですから」

 

彼女は確かに美人ではあるけれど、日に日に好きになっていったのは内面の部分であって見た目だけでは決してないのです。

 

外見も性格も良いということでハードルは上がりましたが、彼女だから、荻野さんだから好きになったんだとそこは胸を張って言いたいところです。

 

「それで、ピカタさんはどうやって付き合うことになったんですか?」

 

私が質問した相手、ピカタさんは見事に後退した額を光らせていますが、この状態から見事結婚を決めた勇者のような人です。

 

「そうだなあ、僕の場合はハゲを逆手にとって、最初からハゲてるから将来を逆に心配しなくていいよとか、ハゲのコンプレックスがある分だけ人に優しい気持ちを持ってるとか話したような」

 

ハゲをプラスにする作戦。なるほど、と思いながらも私に出来るかどうかは少し不安です。

 

そもそも、私の場合まずどうやって荻野さんを誘うか……話はそこからなのです。

 

「でもさ、組長が優しい人だってそこまで言うなら、食事くらいは付き合ってくれるんじゃないの?」

 

そう言うのはゲハさん。

 

「とにかく、こんなハゲに誘われて、なんて卑屈にはならないこと」

 

「そう言われても……」

 

「見た目で断るような女性だったらこっちから願い下げくらいでいいんだよ」

 

この同好会のメンバーは強い心を持っています。

 

彼らと話しているだけで、私にも勇気が湧いてきました。

 

まずは声をかけてみよう。

 

ハゲにだって恋する権利はある|育毛ハゲタカ記

 

それでダメでも荻野さんだったら関係がこじれるようなことはきっとないだろう。

 

「我らがハゲタカ組長は、誰よりも人の気持ちを気遣えるいい人なんだ。俺たちはそれを良く知ってる。だから安心して当たってきたらいい。砕けたって仲間がいるさ」

 

私を応援してくれる皆と乾杯をし、数年ぶりに恋への一歩を踏み出したのです。

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