「育毛ハゲ」のエピソードを紹介します。

話は10年と少し前にさかのぼります。

 

育毛ハゲタカ記

今の私の恰幅のいい体型からは想像できないかもしれませんが、大学生だった当時はどれだけ暴飲暴食をしても太ることもなく、バイト代でカリスマ美容師にヘアカラーとカットをお願いしたりもして、ちょっとしたイケメンだった……と思います。

 

疑わしいでしょうか?

 

今の私を見たらそう言いたくなる気持ちも分かりますが、まあとりあえずは聞いて貰えたらと思います。

 

元来あまり積極的な性格ではない私なのですが、見た目というのはとても大事です。

 

それなりに流行の服を着て、スマートな体形にこんがり焼けた肌、そしてサラサラの茶髪をなびかせていました。

 

更に、勉強は嫌いじゃなかったこともあり、有名大学に通っていたこともプラスになって、女性の方から声をかけられることが多々あったのです。

 

自信に溢れたあの頃は本当に幸せでした。

 

その中から気に入った子に交際を申し込み、デートに、アルバイトに充実した学生時代を送らせてもらっていました。

 

それ以外にもお弁当を作ってくれる子、合コンの誘い。

 

バブルな世の中だったのもあり、世の中が浮かれていたんですね。

 

地に落ちる

 

育毛ハゲタカ記

 

そんな浮き足だった毎日を過ごしていた「育毛ハゲ」でしたがある日彼女から言われた一言であっけなく地に落ちることとなります。

 

「なんかさ。後頭部ヤバくない?」

 

その言葉の意味が分からず一瞬きょとんとした「育毛ハゲ」に、彼女は悪気のない笑いを浮かべながら私の頭頂部をそっと撫でました。

 

(何だ?)

 

言いようのない不安感と焦燥感が私を襲います。

 

けれどその場では、「何言ってるんだよ」と話を終わらせました。

 

彼女もそれ以上何も言ってはきませんでした。

 

一人になった私は自宅に帰るとおそるおそる鏡を見つめます。

 

そして、小さな手鏡を合わせ鏡にして自分の頭を上から覗いてみることにしました。

 

明るく染めた髪が確かに少し薄いような気がしないでもありません。

 

おそらく彼女は何の気なしの冗談のつもりだったのでしょう。

 

しかし、一度気になってしまうとなかなか頭から現実が離れてくれません。

 

サークルの飲み会でのことです。

 

育毛ハゲタカ記

 

話題はゼミの40代講師の話題。

 

彼は非常に研究熱心であったが……ハゲていました。

 

自分の薄毛を彼女に指摘されてからと言うもの、昔のように軽口でハゲの話題を誰かに言うことは出来なくなっていた私はどうか話題がそっちに向かないようにとそう願ったものの、ここはお酒の入った席。

 

やはり人の噂話は最高のつまみとなってしまいます。

 

「あの先生、数年後には絶対ハゲるよな」

 

仲間の声が耳へと響きました。

 

そして……、

 

「そういえば、おまえも予備群じゃないのか?」

 

そんなからかいの声があがったのです。

 

「俺?」

 

おどけてみせながらも、背中を冷たい汗が流れるのが分かりました。

 

一度ならともなく二度も薄毛を指摘されるなんて、尋常じゃない事態でしょう。

 

自分の前のビールジョッキを一気に飲み干したけれど、どうしてか味が分かりません。

 

落ち込み過ぎて、今尚その後の記憶は途切れたままとなっています。

 

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